お疲れ様です。
最近、サービス業の現場では「正当なクレーム」と「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の境界があいまいになり、対応する従業員や店長が疲弊するケースが増えています。
特に近年は、カスハラ対策の義務化が進み、「お客様だから多少は我慢しないといけない」という時代から、「従業員を守るために組織として対応する時代」へ変わりつつあります。
実際の現場では、
・長時間の説教
・人格否定
・土下座要求
・SNSへの晒し示唆
・従業員個人への執拗な攻撃
など、通常の接客対応の範囲を超えるケースも少なくありません。
私自身、長年サービス業の店長として数え切れないほどのクレーム対応を経験してきましたが、初動対応を間違えることで、普通のクレームが深刻なトラブルへ発展する場面を何度も見てきました。
この記事では、
・カスハラ対策義務化のポイント
・クレームとカスハラの違い
・店長が現場で行うべき初動対応
・従業員を守るための店舗ルール
について、現場目線でわかりやすく整理していきます。
カスハラ対策義務化のポイント
2025年の法改正により、事業主には「顧客等からの著しい迷惑行為」を防止するため、雇用管理上の必要な措置を講じることが求められる流れになっています。
対策を怠った結果、従業員が精神的な不調や離職に至った場合、安全配慮義務違反を問われる可能性もあります。
厚生労働省では、事業者が行うべき対策として主に次の内容を示しています。
・カスハラの判断基準を明確化する
・相談体制や連絡ルートを整備する
・発生時の初動対応と事後対応を決める
・対応した従業員への不利益な扱いを防ぐ
特にサービス業では、現場任せにしている店舗ほど従業員が疲弊しやすく、「店長が守ってくれない」という空気が広がると離職にもつながります。
今後は「売上を守る」だけでなく、「従業員を守る店舗運営」が重要になってくると感じています。
サービス業でカスハラが増えている理由
サービス業でカスハラが増えている理由産業別労働組合UAゼンセンの調査では、サービス業従事者の約5割が過去2年以内にカスタマーハラスメントを受けた経験があるというデータがあります。
また、調査によって差はありますが、40〜60代男性の割合が比較的高い傾向も見られます。
現場感覚としても、近い印象があります。
カスハラが発生するきっかけとして多いのは、
・サービス対応の遅れ
・説明不足
・スタッフの接客態度
・サービスの不公平感
・店舗側のミス
などです。
もちろん、理不尽なお客様も存在します。
ただ、現場で長く働いていると、「最初は普通のクレームだった」というケースもかなり多いです。
例えば、
・呼ばれても返事をしない
・表情が暗い
・面倒そうな態度に見える
・説明が雑
など、スタッフ本人に悪気はなくても、お客様が「バカにされた」と受け取ってしまい、感情が大きくなってしまうパターンです。
だからこそ、店長は普段から従業員の接客を確認し、「火種になりやすい対応」を減らしていくことが重要だと思います。
これは私の所感ですが、クレームが発生する原因として「担当者の無愛想・無機質な接客対応からクレーマー問題に発展する」場合があります。たとえば、「呼ばれても返事をしない」「ダルそうな表情や応対」などの悪気はないが誤解を生む接客が原因で、上記①~④が発生したときにお客様の感情が爆発する、というパターンです。
店長の皆様は、日頃から従業員の対応についてチェックし、火種になりやすい行動は事前に消しましょう。
クレームとカスハラの違い
以下にカスハラとクレームの違いについてまとめました。

重要なのは、
「お客様の要求に妥当性があるか」
「伝え方が社会通念上の範囲を超えていないか」
という2点です。
【通常のクレーム】
・商品やサービスへの正当な指摘
・返金や交換に合理性がある
・口調は厳しくても常識の範囲内
【カスハラ】
・人格否定や暴言
・長時間拘束
・土下座要求
・SNSへの晒し示唆
・従業員個人への攻撃
・過剰な謝罪要求
この線引きを店舗内で共有しておかないと、現場スタッフが「どこまで対応すべきか」で迷ってしまいます。
店舗で準備しておくべきカスハラ対策
そろそろ本題に入りますが、お店で行うべきカスハラ対策として、
●店舗でのマニュアル作成・対応フローの取り決め
後述しますが、会社・お店としての明確なルールを決めることが従業員に安心感を与えます。厚生労働省のHPにもありますので、一度読んでみてもいいかもしれません。
●店頭で「カスハラ防止指針」ポスターを掲示
会社・お店の姿勢を可視化することが重要です。こちらも厚生労働省のHPでダウンロードできます。
●非通知からの着信拒否
私の体感で申し訳ないのですが、約半数以上が電話番号を非通知にして電話をかけてきます。当店では、非通知・名前を伺っても名乗らないお客様の対応は受け付けないようにしています。
●ネームプレートを工夫する
従業員のSNSのアカウントが特定されるケースや直接名前を呼ばれて罵倒される・SNSで晒されることへの精神的ダメージを軽減できます。
●スタッフ向けにロールプレイングの実施
マニュアルを読んで知識があったとしても、修羅場の状態でしっかり対応できるかは別問題です。パニックになったり体が硬直する可能性も十分あります。定期的にロープレすることでいざというときにも対応できるようにしましょう。本人たちの自信にもつながります。ですが、ただ行えばよいわけではなく、加害者役も従業員役も真剣にロープレに臨むことが大切です。
カスハラマニュアルに盛り込むべき内容
当店の場合は、以下の内容をマニュアルに盛り込んでいます。
- カスハラの定義
- カスハラ対策の必要性
- 一般的なクレームの種類
- カスハラとなる判断基準
- カスハラ行為の類型
- 関連する法律
- 現場での初期対応
- 具体的な対応例
あと、当店でカスハラ対策の説明会を実施した際に、従業員から質問がありました。
- クレームとカスハラの線引きが知りたい(さきほど説明した内容ですね)
- いざというときの連絡系統
- どのタイミングで店長を呼んだらいいのか?
従業員向けのマニュアルなので、こういった質問に対する対応策は、マニュアルに盛り込むべきですね。
あと、厚生労働省のHPにも「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」がありますので、もしよければご覧ください。
対応の注意点
カスハラ発生時の初動対応
カスハラ対応で最も重要なのは初動です。
初動を間違えると、本来解決できたクレームが長期化する場合があります。
基本的な流れとしては、
① まずは謝罪と傾聴
↓
② 感情的にならず事実確認
↓
③ 店長・責任者へ共有
↓
④ 発言・時刻・人数を記録
↓
⑤ 店舗として対応可否を整理
↓
⑥ 限度を超える場合は対応終了
という流れが基本になります。
■ 対応時の注意点
● 二次被害を防ぐ
「面倒そうな態度」は絶対に伝わります。
実際、クレーム内容よりも、
「最初の店員の態度が悪かった」
という方向に発展するケースはかなり多いです。
まずは、
・不快な思いをさせたことへの謝罪
・相手の話を最後まで聞く
ことが大切です。
● あいまいな返事をしない
その場を収めようとして、
「たぶんできます」
「今回は特別に」
などと曖昧に答えると、後で大きな問題になることがあります。
特に複数人で来店している場合、強い口調で詰められると焦ってしまいます。
だからこそ、個人判断ではなく「店舗としての回答」に切り替えることが重要です。
● 記録を残す
これは非常に重要です。
・日時
・人数
・発言内容
・要求内容
・録音有無
などは必ず記録しましょう。
後から「言った・言わない」になるケースは本当に多いです。
最後に|店長が従業員を守る姿勢が最も重要
私が現場で一番大切だと感じているのは、
「店長や会社が従業員を守る姿勢を明確に示すこと」
です。
以前、売上重視の店舗で、
「常連だから多少は我慢して」
「売上に貢献しているから仕方ない」
という空気がありました。
ですが、その結果どうなったかというと、
・スタッフのモチベーション低下
・現場の空気悪化
・離職
につながっていきました。
もちろん売上は大切です。
ただ、「何かあっても会社は守ってくれない」と感じた瞬間、現場は一気に崩れます。
だからこそ、カスハラ対策は単なるクレーム対応ではなく、「従業員を守る組織づくり」だと私は思っています。
少しでも、現場で働く方や店長の参考になれば幸いです。

