「やる気を上げる」前に「下げる原因」を潰せ!現役診断士店長が教える、離職を防ぐ“下げない”運用術

モチベーションを「上げる」より先にすべき「下げない運用術」を徹底解説 採用・人材戦略


お疲れ様です!

いきなりですが、今、あなたの店舗で「部下のやる気」は落ちていませんか?

理想は、職場のスタッフ全員がモチベーション高く働いてくれること。ですが現実はなかなか難しいですよね。また、近年「静かな退職」という言葉を聞きます。「最低限の業務はしてくれるが必要以上に頑張らない…。」そんなスタッフへの悩みを抱える店長も多いはずです。

特にサービス業は、現場の空気がそのまま接客に出る仕事です。スタッフが疲れていたり、ギスギスしていたりすると、どうしてもお客様の満足にも影響が出やすくなります。 近年、1on1等のモチベーション・離職防止の取り組みを行う職場が増えていますが、実は上げる施策より前に、「下げないためのちょっとした工夫」が先決です。

今回は、店舗で行うモチベーションのマネジメント方法についてお話したいと思います。

■この記事でお伝えしたいこと

繰り返しますが、スタッフのモチベーションは、いきなり頑張って「上げる」より、まずはちょっとした仕組みと運用で「下げない」取り組みを行う方が重要だと思っています。

なぜかというと、モチベーションが下がった状態の店舗で、どれだけ新しい人事制度や施策を行っても、効果が出にくいからです。

例えば、店舗で柔軟なシフト体制・1on1・個別の目標設定を行ったとします。もちろん良い施策です。ですが、現場にモチベーション低下の原因となる『不満の種』が残ったままで果たして効果は出るのでしょうか?穴の空いたバケツに、いくら水を注いでも貯まりませんよね。

モチベーションが下がるとどうなるか? ぱっと思いつくだけでも、例えば次のような影響があります。

・離職
・メンタル不調
・職場内トラブルの増加
・パフォーマンスの低下、当事者意識の欠如
・静かな退職と呼べる状態

こうした負の連鎖により、慢性的に人員が足りない状態が続き、せっかく育てたノウハウも抜けていきます。また、そのスタッフについていたお客様の離反にもつながります。

モチベーションは個人の問題に留まらず、店舗や他のスタッフにも影響がある非常に重要なことなのです。

■モチベーション・やる気・エンゲージメントの違い

ここでモチベーションに関連するキーワードを一度整理したいと思います。

まず、「モチベーション」とは、端的に言うと「仕事をする理由や源泉」のことです。ちなみに日常的によく使われる「やる気」ですが、意味は「実際に行動に移すときの気持ちの高まり」です。同じようで微妙に違いますね。一方、「エンゲージメント」とは、「従業員の会社やお店に対する愛着・貢献したい気持ちを表し、組織と一体となって目標達成を目指す状態」のことです。

モチベーションとエンゲージメントは、いわば『車の両輪』です。どちらか片方だけを高めるのは難しく、現場では常に連動しています。どちらか片方だけ高い状態は、店舗運用では起こりづらく、「店長が話しやすい」「この店をよくしたい」「仲間のために頑張りたい」とスタッフが感じていればエンゲージメントが高くなり、モチベーションも保たれます。

■気を付けよう! モチベーション低下となる接し方

モチベーション低下の落とし穴は、サービス業店舗のいたるところで発生しています。スタッフ目線での現場あるあるは、こんな感じです。

①部下が困っているのに上司が無関心
②クレームやミスを聞いて態度や表情が変わってしまう
③ろくに状況を把握していないのに結果だけ聞いて注意される
④部下から改善案があってもスルーされる
⑤指示は曖昧なのに、上司のイメージと違うと修正依頼が飛んでくる
⑥評価制度を作っても運用でズレる などなど

忙しい店長なら、一度は心当たりがあるのではないでしょうか。もちろん出来ているという店長もいると思います。

ただ、重要なのは「しっかり出来ている」という自身の認識ではなく、「部下がそう思っているかどうか」です。店長には自覚がなくても、部下にとっては精神的ダメージを負う場合があるので注意が必要ですね。

実際、上記6つの状況をしばらく放置すると、部下からは、・また言ってるだけ ・どうせ変わらない ・自分だけ怒られる ・頑張るだけ無駄、といった冷めた空気が生まれます。

■モチベーションが下がる原因

少し難しい用語が出ますが、モチベーション低下の要因をいくつかに分類すると、

・内発的動機の阻害(成長実感がない/興味が持てない業務)
・外発的動機の阻害(給与・評価・昇進・報酬がない)
・仕事内容の問題(単調/負荷過多/目的が見えない)
・職場環境の問題(人間関係トラブル)
・組織文化の問題(保守的/成果主義の行き過ぎ/コミュニケーション閉塞)
・本人のライフイベントや価値観のズレ

上記は複数要因が同時に発生します。例えば、店舗に評価制度があっても運用が上手くいってないと不満(自身の内面からくる動機の阻害)に変わります。また、新人育成のOJT(現場教育)が属人化(教える人の気分やスキルで質が変わる状態)していれば、自分で考えて動く楽しさが奪われてしまいます。

仕事内容についても、単調な仕事ばかり・残業時間や作業負担が大きい・なんのためにやっているか分からないを感じた場合は、モチベーションダウンの要因になります。

ここで「職務特性モデル」という理論を紹介します。この理論では、以下5つの要素が揃った仕事が、従業員のモチベーションを高めるとされています。

・技能多様性:単調な仕事ではなく、複数のスキルを生かせる仕事
・タスク完結性:初めから終わりまでの一部始終に関わることができる
・タスク重要性:他者の生活や社会にインパクトをもたらす重要な仕事
・自律性:自分で計画をたてたり目標設定したり、自分のやり方で進められる自由度の高い仕事
・フィードバック:結果がどうなったのかを、その都度、知ることのできる仕事

以上が、従業員の重要な心理状態(有意義感・責任感・成果の理解)を生み出し、内発的動機づけを高め、最終的に仕事の成果や満足度、定着率向上につながるという考え方があります。

あと、モチベーションダウンは、上司(店舗)と部下の関係だけではなく、同僚間や先輩後輩の間でも起こります。やはり人間関係は多いですね。正直「えっ? そんなことで?」という相談を受けることも多いのですが、重要なのは本人がどう感じているか? です。

■モチベーション低下の早期兆候は以下の変化で見抜く

店舗でよく見られる初期の兆候です。

・以前より挨拶の声が小さくなる&顔を合わさない
・現場での笑顔が減る ・仕事の相談や報告が減る
・いつも参加していたミーティングに参加しなくなる
・遅刻やシフト変更が増える

上記以外にも、勤怠率・顧客評価・研修参加率・改善提案の有無などが変化しますが、「変化の方向」を見ることが大切です。

また、店長自身が直接聞くべきなのは「スタッフの本音」です。

「最近しんどいです」「この仕事、何のためにやってるんだろうって思ってしまって…」とスタッフがこぼしたとき、それは態度を正す場面ではなくフォローする場面です。話しやすい場を作ること自体が、負の連鎖を止める役割になります。

■店長が現場で回すべき「下げない運用」の型

では、ここから具体的にどうしていくのか説明します。

理論を現場で使える運用に置き換えた「今日から回せる手法」をお伝えします。

1. 負担を増やさず従業員の本音を拾う方法

個別面談(1on1)は非常に有効な手段ですが、全員分の時間を確保するのは現場では難しい場合があります。

そこで大切なのは、短時間でスタッフが気負わず本音を話せる”機会”を作ることです。

・出勤直後や退勤前のひと言雑談
・休憩室・喫煙室に行って休憩中の従業員と3~5分程度の話をしてみる
・クレーム対応後の短いフォローを入れる
・終礼時に「今日のよかった行動」を全員で褒め合う時間
・月1回程度の軽いサーベイ(アンケート)、などがあります。

これを継続的に行っている店舗は「最近ちょっと元気がないな」「動きが止まってきたかも」という変化にも早く気づけますし、対策も小さく早く打てるようになります。

私の実感ですが、翌日が休みの従業員との仕事終わりの雑談タイムで、意外と本音が出やすい傾向にあります。あとは、店舗で退職者が出た場合、退職当日に2人きりの空間でさらっと聞いてみると色々と隠れた不満が出る場合があります。明日から出勤しなくていいので、言いやすいことが理由でしょうか?もし退職予定者がいた場合は、聞いてみるといいかもしれません。


本音で話せる機会づくりといえば飲み会もあります。もしよければこちらをご覧ください。
部下との距離を縮める「飲み会の設計図」—明日から現場が少しラクになる方法

2. 指示は必ず「目的→手順→確認」の順で

曖昧な指示は部下を困惑させます。ありがちな曖昧な指示に、

・主語がない
・そもそも、店長と部下で認識が違う
・なぜ行うのか理由や目的が分からない
・どこまでの範囲でやったらいいか分からない

例えば、商品棚替えの指示をする場合、こう話すとベストでしょう。

❌ 悪い例:「棚替えしといて」(何のため?どこまで?いつまでに?)
⭕ 良い例:「今週の客層が変わっているので棚の視認性を上げたいです(目的)。まず入口側から上段を修正し、次に中段、最後に下段です(手順)。閉店前に1分だけ確認させてください(確認)」

もちろん、従業員の作業レベルに応じて、手順を任せても構いません。

3. フィードバックは「結果+理由」を添える

部下へのフィードバックでありがちなのが、「今の良かったよ!」「次は気をつけて」などといった感情的な評価だけで終わってしまうことです。 せっかくフィードバックしているのにもったいない。これでは、部下は「次も同じように再現」することができません。

大切なのは、「なぜその結果になったのか(理由)」を分解し、「どう次に活かすか(未来)」をセットで伝えることです。

具体例1:クレーム対応後のフォロー

単に「よく収めてくれたね」で終わらせず、具体的にどの動きが効いたのかを伝えます。

❌ : 「さっきのクレーム、無事に終わって良かったよ。お疲れ様!」
⭕: 「さっきの対応、お客様が最後は納得してくださったね。それは〇〇さんが途中で口を挟まず、まず3分間お客様の話を出し切らせたからだよ(理由)。相手の感情が落ち着いてから事実確認に入ったあの順番は、どんなトラブルでも有効だから、次もその勝ちパターンでいこう(未来)。」

具体例2:ピーク時の連携(スピード)

「早かったね」ではなく、周囲への影響を言葉にします。

❌: 「今日のランチ、提供早かったね!助かったよ。」
⭕: 「今日のピーク、料理の提供スピードが安定していたね。〇〇くんが次に作る伝票を大きな声で読み上げてくれたおかげで、ホールとの連携がスムーズになったのが一番の要因だよ(理由)。あの声掛けがあると、新人スタッフも次に何をすべきか迷わなくなるから、明日もリーダーシップを期待してるね(未来)。」

4. 褒める対象は人格ではなく行動

スタッフを褒める際、「〇〇さんは優秀だね」「さすがエースだね」といった「人格(その人自身)」を対象にした褒め方は、実は危険です。周りのスタッフに「どうせあの人は特別だから」という不公平感を与えてしまうからです。

大切なのは、「誰が」ではなく「どの行動が」チームに貢献したかにスポットを当てることです。特定の誰かを持ち上げるのではなく、「良い行動」を称賛の対象にすることで、他のスタッフも「自分もその行動を真似すれば評価されるんだ」と納得感が生まれます。

具体例1:チーム全体の「当たり前」を拾う

特定の個人ではなく、全員が意識した「基準」を褒める例です。

: 「本日は全員が挨拶を止めなかったです」
: 「今日のランチピーク、全員が作業の手を一度止めて、お客様の目を見て挨拶できていましたね あの瞬間、店内の空気がパッと明るくなりました。忙しい時ほど、あの『0.5秒のアイコンタクト』を全員で守っていきましょう。」

具体例2:影の貢献(フォロースルー)を拾う

目立つ成果ではなく、円滑な運営を支えた「速さ」や「配慮」を褒める例です。

: 「本日は新人フォローの返事が速かったです」
: 「インカムでの新人フォロー、返信までのスピードが1秒以内でしたね。 あの即レスがあったおかげで、新人の〇〇さんも不安にならずに済みましたし、お客様を待たせることもありませんでした。あの『速いレスポンス』が、今のうちのチームの強みです。」

5. 部下が困っているときのサポートの重要性

部下が困っている、悩んでいる、ミスをした。そんなときこそ店長の対応がモチベーションを左右します。

特にクレーム対応やカスタマーハラスメントの場面では、スタッフは強いストレスを感じています。その直後にどうフォローするかで、スタッフの心理的安全性は大きく変わります。

・まず事実を聞く(感情的にならず、淡々と状況を整理する)
・スタッフの対応を肯定する(「よく対応してくれたね」「冷静だったね」)
・一緒に振り返る(「次はこうするともっと良くなるかも」と前向きに)
・必要に応じて店長自身がフォローに入る

こうした対応を積み重ねることで、スタッフは「困ったときに助けてもらえる」と感じ、安心して働けるようになります。カスタマーハラスメントについては、こちらの記事も参考にしてください。

サービス業の現場で使えるカスタマーハラスメント対策と初動手順【義務化時代の店長マニュアル】

6. 目標は「週次で1つだけ更新」

毎月10個も目標を立てるのは、正直、店長の自己満足です。現場では誰も覚えていません。

現場では目標は1つだけ、更新は週ごと、確認は1分です。

例えば「今週は初来店のお客様の声掛けを1つだけ改善します」「今週はクレーム後の共有スピードだけを観察します」などです。

シンプルで具体的な目標を1つずつクリアしていく方が、スタッフにとっても分かりやすく、達成感も得やすくなります。そして何より、店長自身も管理しやすくなります。

■まとめ

いかがでしたか? 売上や客数が減少しているお店は、どうしても頭の中が営業のことで一杯になり、なかなか部下のことまで気が回らない方もいるのではないでしょうか?

ただ、そもそも売上・客数減少の理由が、従業員のモチベーション不足によるサービス提供・顧客満足低下かもしれませんよ。自動化が進んだ今でもサービス業は「人」が店舗の成果に直結します。

今回お伝えした「下げない運用」は、どれも特別な予算や大きな仕組み変更は必要ありません。必要なのは、日々のちょっとした意識と行動の積み重ねです。

これらを今日から始めてみてください。小さな積み重ねを毎日回せる店舗は、半年後1年後の成果と顧客満足で差が出ます。

モチベーションを「上げる」のは難しくても、「下げない」ことは今日からできます。まずは目の前のスタッフ一人ひとりに、ちょっとした声かけから始めてみませんか?

行動リスト

□部下に対してモチベーション低下となる言動をしていないか?
・部下が困っているのに上司が無関心
・クレームやミスを聞いて態度や表情が変わってしまう
・ろくに状況を把握していないのに結果だけ聞いて注意される
・部下から改善案があってもスルーされる
・指示は曖昧なのに、上司のイメージと違うと修正依頼が飛んでくる
・評価制度を作っても運用でズレる
□3分の雑談で本音を聞くようにしているか
□指示は「目的→手順→確認」で伝えているか
□行動を具体的に褒めているか
□目標は多めに設定していないか