サービス業の現場で使えるカスタマーハラスメント対策と初動手順【義務化時代の店長マニュアル】

接客・顧客対応

お疲れ様です!

近年、サービス業の現場で「クレーム」と「カスハラ」の境界が曖昧になり、対応者が疲弊するケースが増えています。ここでは法律の要点と、店長が今日から使える対策と初動手順を具体的に整理します。

カスハラ対策法(義務化)の要点

2025年6月成立の法改正により、事業主は「顧客等からの著しい迷惑行為」を防止するため、雇用管理上の必要な措置を講じることが義務付けられました。対策を怠り従業員が精神疾患や離職に至った場合、安全配慮義務違反に問われるリスクがあります。

ちなみに、厚生労働省が示す、事業者が取るべき対策は次の4つです。

① 会社・店舗としてのカスハラ判定基準を明文化し、従業員へ周知する
② 現場が1人で抱え込まない連絡ルートと相談体制を整備する
③ 発生時の初動対応と事後フォローの手順を決める
④ 対応者への不利益な取り扱いを禁止し、責任追及や評価減をしない

という内容になっています。

この法改正は従業員を1人でも雇用している全事業者が対象であり、事業者の方はもちろん、店長も知らなかったでは済まされない時代になりましたね。

カスハラの実態と現場の体感

産業別労働組合「UAゼンセン」の調査によると、サービス業に従事している人の約50%弱が過去2年以内にカスタマーハラスメントを受けた経験がある、というデータがあります。※私もその一人です。あと、カスハラの加害者で多い割合が、

  • 年齢別では40~60歳代
  • 性別でみると男性が多い

などの年齢層や性別の傾向が見られる調査も存在します。私も数えきれないほどの対応をしましたが、大体そんなイメージでしょうか。

ちなみに、カスハラが起こる理由としては、

  • お客様対応ミスやサービス対応の遅れ
  • サービスの不手際
  • 対応者の説明不足や間違い
  • 顧客間でのサービスの不公平感

などがあります。

これは私の所感ですが、クレームが発生する原因として「担当者の無愛想・無機質な接客対応からクレーマー問題に発展する」場合があります。たとえば、「呼ばれても返事をしない」「ダルそうな表情や応対」などの悪気はないが誤解を生む接客が原因で、上記①~④が発生したときにお客様の感情が爆発する、というパターンです。

店長の皆様は、日頃から従業員の対応についてチェックし、火種になりやすい行動は事前に消しましょう。

クレームとカスハラの違い

以下にカスハラとクレームの違いについてまとめました。

サービス業で起こるクレームとカスハラの違いをまとめた表

お客様の要求に

  • 妥当性があるか、
  • 伝え方に許容範囲を超えてないか、がポイントになります。

お店で準備しておくこと

そろそろ本題に入りますが、お店で行うべきカスハラ対策として、

●店舗でのマニュアル作成・対応フローの取り決め

後述しますが、会社・お店としての明確なルールを決めることが従業員に安心感を与えます。厚生労働省のHPにもありますので、一度読んでみてもいいかもしれません。

●店頭で「カスハラ防止指針」ポスターを掲示

会社・お店の姿勢を可視化することが重要です。こちらも厚生労働省のHPでダウンロードできます。

●非通知からの着信拒否

私の体感で申し訳ないのですが、約半数以上が電話番号を非通知にして電話をかけてきます。当店では、非通知・名前を伺っても名乗らないお客様の対応は受け付けないようにしています。

●従業員のネームプレートの工夫

従業員のSNSのアカウントが特定されるケースや直接名前を呼ばれて罵倒される・SNSで晒されることへの精神的ダメージを軽減できます。

●スタッフ向けにロールプレイングの実施

マニュアルを読んで知識があったとしても、修羅場の状態でしっかり対応できるかは別問題です。パニックになったり体が硬直する可能性も十分あります。定期的にロープレすることでいざというときにも対応できるようにしましょう。本人たちの自信にもつながります。ですが、ただ行えばよいわけではなく、加害者役も従業員役も真剣にロープレに臨むことが大切です。

カスハラマニュアルに盛り込むべき内容

当店の場合は、以下の内容をマニュアルに盛り込んでいます。

  • カスハラの定義
  • カスハラ対策の必要性
  • 一般的なクレームの種類
  • カスハラとなる判断基準
  • カスハラ行為の類型
  • 関連する法律
  • 現場での初期対応
  • 具体的な対応例

あと、当店でカスハラ対策の説明会を実施した際に、従業員から質問がありました。

  • クレームとカスハラの線引きが知りたい(さきほど説明した内容ですね)
  • いざというときの連絡系統
  • どのタイミングで店長を呼んだらいいのか?

従業員向けのマニュアルなので、こういった質問に対する対応策は、マニュアルに盛り込むべきですね。

あと、厚生労働省のHPにも「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」がありますので、もしよければご覧ください。

対応の注意点

2次被害を防ぐお客様対応

 お客様からの問い合わせ対応は初動が大切です。お客様の言っていることを信用していない・面倒くさい態度を察すると、本来のクレーム案件が解決したあとも、〇〇の態度が悪いという追加の対応に追われる場合があります(実際、過去に何度かありました)。ご不便をお掛けしたことへの謝罪・相手の話をしっかり聞くことが必要です。

●正確な事実確認

 感情的になっている相手に対して、こちらも感情的になってしまうとこの後がややこしくなります。思い込みやその場での判断はせず、まずは冷静に状況の確認を行う必要があります。

●対応できる・できないを早い段階から伝える

 早い段階で、お店ができる・できないの境界線を引くことが重要です。はっきりしない回答をしていると「押せば折れるんじゃないか」と、エスカレートする可能性があります。従業員個人VSカスハラ客ではなく、お店などの組織VSカスハラ客の構図に切り替えることで鎮静化のきっかけをつくることが重要です。

●あいまいな返事・個人判断の約束はしない

 注意する点として、カスハラ加害者は、相手がこちらの言動に対して揚げ足を取ってくることが多い、という点です。カスハラ加害者は複数名で来店しているパターンも多く、複数からワーワー言われると焦ってしまうことがあります。その場を乗り切ろうとしたあいまいな返事・ルールから逸脱した約束をすると、2次被害に遭う可能性があります。

 

最後に私がカスハラに対して思うこと

私が感じているカスハラ対策で重要な点として「本部や店長が従業員に対して従業員を守る姿勢を、はっきり伝えること」が重要だと思っています。お店によっては過剰な売上至上主義の店長も存在します。暴言を吐く・特別扱いを要求する常連客に対しても、売上に貢献しているからと多少は我慢するよう指示している店長もいました。そうなると、指示された部下は、我慢して対応する→モチベーション低下→最悪離職、という流れになります。いくら売上が重要だからと言ってもいざというときに上司が守ってくれないのはイヤですよね。

少しでもお店の対策の参考になれば幸いです。